いや、すでに遅れているし。 音場調整 ディレイ編その2

前の記事の続きです。
と思ったのですが、すこし解説。

かける 3 ってどういうこと?


" 距離[m] × 3 = 時間[ミリ秒] "という計算がたくさん出て来てましたけど、この" ×3 "っていうのはどこから来たのでしょうか?

大気中の音速を 344m/秒( 20˚C、1気圧)とすると、音が 1 m進むのにかかる時間は 
1 / 344 ≈ 0.00291秒] = 2.91[ミリ秒] ≈ 3
となります。ここから音が進んだ距離[ m ]に 3 をかけるとかかった時間[ミリ秒]になるわけです。

だいたいです。正確ではありません。が、これだったら暗算でもできるでしょ?

「円周率はおよそ 3 」よりはちょっぴり正確です。

本題に戻ります。前回はモニター(とPA)に関することでしたが、今回はPA(だけ)に関することです。
簡単なことです。

生声とPAの音がなるべく観客に同時に届くようにする

これだけです。
ちょっと待てよ。マニュアルの記事には

  • [卓PA LR] = { [Vo中央,観客の距離]  –  [PA LR,観客の距離] } × 3
  • [卓PA C] =  { [Vo中央,観客の距離]  –  [PA C,観客の距離] } × 3
ここだけちょっと面倒です。[卓PA LR]が5ms未満の場合は、[卓PA LR]、[卓PA C] 両方から[卓PA LR]を引きます。[卓PA LR]が5ms以上の場合は、[卓PA LR]、[卓PA C]両方から5msを引きます。その結果、[卓PA C]がマイナスなら、明瞭度を下げる原因になるので、使用を止める、音量を下げる、2F狙い専用にするなどの策をとります。
けっこう面倒なことが書いてあるぞ。だいたい、

5msってどういうこと?


その数字、どこから来た?

実はPAにはことさら入れなくても既にディレイが入っています。
  • デジタル卓自体が持つレイテンシー
    • YAMAHA LS-9では2.5ms
  • スピーカープロセッサ内蔵のSubLowとの位相合わせのためのディレイ
    • NEXO PS15(TDcontollerMk ll)では公表されてないが、最長で3.3msと 想定してみる。( 150Hzでクロス、位相補正が最長でも半波長分として)
というわけで、2.5~5.8msのどこかじゃないかと推察したわけです。

で、5 。 何かに決めないと計算できないので。
本当は 4 かも知れないし、6 かも知れません。どれでも良い。(測定すれば本当の値がわかります。って言うか、した方がいい)

「円周率はおよそ 3 」より さらに いいかげんです。

で、最終的にどういうことかというと、


  • 生声とPAの音がなるべく観客に同時に届くようにする。
  • ただし、 すでにディレイが入っているからその分は加減してね。マイナスにはできないからその時はゼロで。
  • PA Cが近過ぎたらその分はディレイを入れて補正してね。遠過ぎたら使えないかも。


ということです。

多分、標準的な仕込みでは、PA LRにディレイが必要になることはあまりないと思います。
PA Cをうまいこと調整すれば明瞭度が上ります。

ここまで書いてきて何ですが、実はワイヤレスマイクも遅れています。
アナログもデジタルもです。機種によって違いますが、2~4 msと言われています。
計算が複雑になるためここでは組み入れていませんが、いや、もっと正確にやりたい、というひとは挑戦してみてください。

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